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2009.11.23

羽生田です。─ 「チーム」で「いい仕事をする」という意味では一緒なのかな ─

20091123.jpg 豆蔵の羽生田です。
「SKIP」をやられている倉貫さんからリレーコラムのバトンを受け取りました。

「アジャイル」という考え方はITやソフトウェアの開発を超えて普遍的なものなのか、それともソフトウェア開発固有の部分もあるのかという悩みも一緒にバトンに付いてきましたので、少し考えてみましょう。

わたしも最近は、仕事やコミュニティ活動を通して、IT以外の分野の方と接する機会が増えています。パターンの勉強会を通じて建築の方と話したり、先日もアジャイルプロセス協議会の勉強会で、看護学の先生から医療の現場における情報共有の仕組みや看護師のみなさんの仕事における判断と倫理といったお話を伺う機会がありました。その際の気付きを含めてお話してみたいと思います。

医療の現場とソフトウェア開発では、医療が人の生き死にに直接関わるという点で大きな違いがあります。看護の現場でアクションを起こす際の価値観は究極的には患者さんの生命との関係で判断に直結します。ソフトウェア開発では、よほどのクリティカルシステムでない限りは、「お金」「便利さ」といった価値観との相対関係で決まる部分が大きいといえます。この点では、かなり違いを感じますが、患者さんやクライアントさん、ユーザーさんに対して満足してもらう、笑顔でいてもらえるように「チーム」で「いい仕事をする」という意味では一緒なのかなと思います。

常に現場で状況をチームで共有する仕組み作りや、いつも患者さんの命ドリブンで優先順位をつけてアクションのための判断を行うこととか、必ずペアで作業間違いが起こらない様に行動することとか、アジャイルでソフトウェア開発を行うときと非常に似た発想での仕事の進め方が多いのも事実です。

しかし、一方でソフトウェア開発におけるアジャイルの場合には、「実行可能なアーキテクチャ」としてのソフトウェアコードがチームで共有されており、要求や設計に関する仮説をそのままコードとして作成したり改訂・推敲しながら、それをまた実行してみて動作や効果や問題点を実際にその場で把握する「検証」という行為を行うことが大きな特徴になっています。

この部分は、患者さんという人間相手の医療現場では絶対できないことであり、まさに『ソフトウェア』という仮想物体を相手にできるITの強みと言えるのではないでしょうか。この特性のおかげで、工夫しさえすれば、仮説設定と試行検証のサイクルを人間の思考のスピードに近づける形で回せる可能性が開かれているわけです。

あともう1つ大きく違うと思ったのは教育の体制です。医療教育では、学校でかなり厳しく医学基礎と実技教育と倫理指導を行うそうです。それでも実際の医療現場では通用しないのだけれども、やっておかなければ何がどう通用しないかがその場で認識できない。自分は現場でここが通用しないと理解できるようになるために学校での教育がカリキュラムとして定義されているようです。残念ながら、IT人材の教育では、学校で基礎と実技と倫理を3位一体で教えるという状況にはないわけです。この話を看護学の先生から聞かされた時には愕然としました。

ただ一方で、アジャイルソフトウェア開発では、1イテレーションごとに要求・設計・実装・テスト・評価といった総合的な経験をOJT的に経験することができ、しかも前のイテレーションでの問題や失敗を次のイテレーションで改善してその「違い」を以前の失敗を忘れないうちで『実感する』ことが可能です。そういう意味では、ものすごーく実践的な教育の場が与えられているとも考えることができそうです。

こうして考えると、「いい仕事をチームで達成する」の定義やそこで何にコミットするかというテーマは生死からお金儲けまでいろいろバリエーションがあるし、「仮説検証」という場合にも人間相手で勝手に仮説を実動検証できないケースから実行可能な範囲で何やってもOKというフリープログラミングまでかなりスペクトルの幅は広いということがわかります。どちら側の極端で考えているかで、同じキーワードで「アジャイル的」というものを捉えても、その実質は人によってかなりぶれるということがこれでよくわかります。

倉貫さんの疑問に答えられているかどうかわかりませんが、何かヒントになっているでしょうか。このあたりのテーマはぜひ、サイバー大学の前川徹さんにもお聞きしてみたいですね。マエガワさん、いかがでしょうか?

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