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2009.06.08

2008 Gordon Pask Award受賞者として平鍋氏がインタビューを受けました

平鍋氏が2008 Gordon Pask Award受賞後に、Aaron Sanders氏より平鍋氏へ行われたインタビュー記事
(原文:http://aaron.sanders.name/agile/interview-with-kenji-hiranabe-2008-pask-award-winner )を邦訳したものです。
本インタビューは、Gordon Pask Award(アジャイルで実践に貢献した人を年に2名だけ表彰する賞)の意味を今一度明確にするとともに、Agile2009にて過去の受賞者全員を一同に集めたパネルディスカッションを行うため、その一環として行われたものです。Agile Japan 2009についても言及されてますので、ぜひご一読ください。
Aaron Sanders (以下、Aaron): Gordon Pask Awardの受賞は、ご自身の行うアジャイル活動に対して何か役立つことがありましたか?(役立ちましたか?)
Kenji Hiranabe (以下、Kenji): 実を言うと、Gordon Pask Awardは日本では全く知られていません。でも、僕の仕事仲間は今回の受賞を心から喜んでくれて、僕は思わず泣いてしまいました。ただ、今のところ受賞は、仕事に対して特別な影響はありません。
Aaron: なぜ、それほど感極まったのでしょう?
Kenji: 僕は長い間、エンジニアの仕事人生をより良くするために、アジャイルを日本に紹介・実践する活動を続けてきました。その活動が海外で認められたことは大きなことです。そして、この活動は、僕の仕事仲間や友人たちも一緒に協力して広めてきたことです。
Aaron: では、受賞は、協同の活動におけるものだったのですね。
Kenji: はい、そうなんです。アジャイルを日本に取り入れる活動をする中で、徐々に仲間たちが集まってくれコミュニティを築いてくれました。僕の受賞スピーチがYouTubeにあがっているのをご存知ですか?スピーチの最後の日本語部分は、同士たちへの謝辞なんです。
Aaron: 素晴らしいですね。アジャイルによるエンジニアの仕事人生の変化の中で、最も良いものは何だと思いますか?コミュニティ?それとも他の何かですか?
Kenji: 私には、エンジニアたち自身が変わった事が一番の違いだと思えます。言い方を変えると、彼ら自身が「僕達は変われるんだ、羊でいる必要はないんだ」という事を知ったことです。アジャイルは反官僚主義、反形式主義、反体制的、、、ぴったりくる言葉がでてきませんが、つまり古い考えに"No!"と言うことです。しかし、そうすることで組織内で衝突が起こることがしばしばありますが。しかし、僕自身は理解ある上司に恵まれラッキーでした。
Aaron: サポートしてくれる人がいるということは、とても助かりますね。そういえば受賞スピーチの中で"職を失いかけた"と言っていましたが、あれは、どういう意味だったのでしょう?
Kenji: 僕達の大半(コミュニティの日本人エンジニアたち)は職場での衝突を経験しています。僕があのスピーチで「職を失う」の言葉を使って言いたかったことは、エンジニアたちは、長い間、アンハッピーで、理解されない時代を送ってきており、その中で一度は職を失うリスクを冒しても、自分が属する組織変革に取り組んできたということです。そうしたことが、成果として報われた、というのが私の受賞の心境であり、仲間とともに喜びたいことです。
Aaron: ちょっと話を変えましょうか。最近はマインドマップをどのように利用していますか?
Kenji: 主に、次の3つの場面で使用しています。
1)製品の新機能を模索する時。僕はいつもユーザストーリを書く前にたくさんのマインドマップを描きます。
2)打ち合わせ等で、プロジェクタを使って、参加者全員とアジェンダ全体の確認をする時。
3)記事を書く時の構想段階で。
Aaron: この他では、最近どのような事に取り組んでいますか?
Kenji: 講演をしています。現場の「見える化」、良いファシリテーターになる方法について(邦題「現場力を高める見える化手法、プロジェクトファシリテーション?モチベーションアップのツールと場づくり?」)。これらをテーマに、この5年で約100回の講演をしています。
Aaron: 発表用の原稿が要らないくらいでしょうね。
Kenji: ええ、この内容は、もう空で覚えています。これまで、PM(プロジェクトマネジメント)、QA(品質保証)、マネジメント、リーダーシップ、それと他のコミュニティ等にも招かれて講演を行っています。
Aaron: その講演の見所はどこですか?
Kenji: 現場の「見える化」の写真がふんだんに使われたスライドです。それから、「あなたは変われます」と、「周りの人を手助けできます」という事を伝えていることです。逆説的に聞こえるかもしれませんが、僕が多くのカンファレンスに招かれるのは、講演で「アジャイル」という言葉を使っていないのも理由だと思っています。
Aaron: それはどういう意味ですか?つまり講演ではアジャイルのアイディアを語っているけれど、"アジャイル"という言葉を使わず、またアジャイルに関する講演とも謳わない、ということですか?
Kenji: 講演で話すアイディアは、アジャイル、トヨタ生産方式、ファシリテーションから引いたものです。大半はアジャイルのものです。しかし、講演では大きく"アジャイル"とは言っていません(中ではアジャイルの話をしますが)。
Aaron: アジャイルのどんなアイディアが、ファシリテーションに役立つものだと思いますか?やはりエンジニアたちに「自分自身が環境を変えられる力を持っている」という事を自覚させることでしょうか?
Kenji: アジャイルは反体制的なものなので、最初からアジャイルを好きになるマネージャーは、なかなかいません。
Aaron: だから講演で"アジャイル"と言わないんですね。言ってしまうと、話を聞いてもらえなくなるから。
Kenji: はい、そうなんです。(先のファシリテーションに役立つアジャイルのアイディアに関する質問に対して)「かんばん」、「バーンダウンチャート」などの壁を使った見える化、「朝会」、ふりかえりやその他にもたくさんありますね。
Aaron: 我々は皆マネージャーのいる環境で働いているので、これらのアイディアをマネージャーの理解の下で取り入れて仕事する為には、どうすればよいでしょうか?
Kenji: 僕は、マネージャー達に実例を見せるようにしています。二箇所に分散して作業しているメンバー同士が、かんばんやタスクボード等でコミュニケーションをとっているチームの実例です。実は日本人のマネージャーは、デミングサイクルやPDCA、品質に関する管理手法などには理解があります。そこで「アジャイルとはPDCAなんですよ!」という言い方をすると、マネージャー達は急にアジャイルに理解を示し始め、アジャイルを好きになってくれるんです。日本には、依然としてQCサークルの文化が残っています。
Aaron: PDCA(Plan Do Check Act)すなわち、やってみて調整を繰り返すことですよね? それのもう少し形式的になったものかな。
Kenji: その通りですね。
Aaron: QCサークルは、継続的な改善や、永続的な変化に役立つものですか?
Kenji: はい、そうです。しかしQCサークルは現場で形骸化しつつあります。若いエンジニアには好まれていません。
Aaron: 堅苦しすぎた?
Kenji: いえ、表面だけで中身がない状態になってきています。エンジニア達は、そうしろと言われるからやる。そこには情熱や熱意がない。「これをやらなきゃ」という宿題のようなもの。つまりQCサークルは、近年、形式だけが残り、実際には機能していない現場が多いんです。僕の講演のスライドを見たマネージャー達は、(スライドで紹介されたアイディアがアジャイルだということは知らずに)、新しい改善活動の方法だと受け入れ、長い間、互いに話をしてこなかったエンジニア達と話を始めるんです。アジャイルについてではなく、「現場を改善するにはどうすればよいか」という事について。これは僕にとって嬉しいことで、これが何と呼ばれようと関係ないんです。アジャイルでもTPSでも QCサークルでも。肝心なことは、マネージャーとエンジニアが互いに、職場での仕事人生を改善していく為に変わりはじめ、何をすれば良いか話し始めることなんです。
Aaron: なぜそのように考えるのですか?「見える化」のような単純なことがそう作用すると?
Kenji: もちろん「見える化」だけだけではありません、「ふりかえり」や「朝会」も含めてです。講演では、どうやったらプロジェクトのメンバー全員で「仕事をしながら、同時に、仕事を改善する」ことができるか、ということを話します。
Aaron: なるほど。そう言えばニコニコカレンダーは今でも使っていますか?私はニコニコカレンダーの概念が非常に面白いと感じていて、ニコニコカレンダーの情報がどのように職場で活用できるのだろうと思っていました。
Kenji: はい。ニコニコカレンダーは会話の糸口になります。外国の方には理解しにくいかもしれませんが、日本人のエンジニア達はあまり自発的に話をしません。これは日本の文化的なことですが、あまり自分自身について話さないんです。
Aaron: では、ニコニコカレンダーはエンジニア同士が間接的に会話をやり取りする場所のようなものなんですね。
Kenji: そうですね。間接的な会話の場です。そして、これがまた話を始める良いきっかけになるんですよ。このシャイさは、「恥の文化」と、ルース・ベネディクトが「菊と刀」で言っていることに近いかもしれません。
Aaron: 日本のエンジニアたちは恥ずかしがって自分自身の話をしないのですか?それとも、行儀の良いことではないと思うから?
Kenji: ええ、恥ずかしく思うんです。といいますか、私事を大きい声で話すことを心地良く感じない。
Aaron: では、ニコニコカレンダーは、恥ずかしがりを克服するのにも役立つツールですね。
Kenji: そうですね。それもありますし、それ以外にもマネージャーに気付きをもたらす効果があります。例えば"チームメンバー全員調子が良さそうに見えるけれど、あいつだけ今週はずっと元気がないようだな。よし、ちょっと声をかけてこようか"といったような気付きです。
Aaron: 会話へと導くわけですね。それはまさにストーリーカードのようですね!
Kenji: そうですね。そう言えますね。      
Aaron: インタビューもそろそろ終わりの時間です。最後に何かありますか?
Kenji: そうですね。Gordon Pask Awardの受賞は、日本のアジャイル活動がフェーズ2へと進むきっかけとなりました。具体的な成果としては2009年4月22日東京、アジャイルアライアンスが初めて協賛したカンファレンス「Agile Japan 2009」の成功です。このカンファレンスには、200名を超える人々が来場しました。
このAgile Japanでは、ペア割引チケットというものを準備して、上司、またはお客様と一緒に参加することを強く勧めました。その結果、参加者の実に75%がペアで来場したのです。これは、エンジニア、マネージャー、顧客が、アジャイルを使って(彼らはアジャイルではなく他の呼び名を使っているかもしれませんが)、ソフトウェアの開発現場をもっと良くしようと、お互いに話し始めたことの現れだと信じています。これはGordon Pask Awardの受賞における最高の効果ですね。
どうもありがとうございました。
Aaron: こちらこそありがとうございました。
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